信頼関係を築く接遇力
接遇の基本は利用者の立場に立つこと
今、介護の現場では、利用者の多様なニーズに応じられる「接遇」が求められています。一人ひとりの利用者に適した介護を提供するためにも、利用者のことをよく知って相手の立場に立った接遇を心がけましょう。
接遇の基本は利用者の立場に立つこと
最近、介護の現場では「これはキライだからやりたくない」「うちの親にはこうしてほしい」など、はっきりと主張したり権利意識が高かったりする利用者や家族が増えています。それは、忍耐を重ねて戦後の経済成長を支えた世代と違い、恵まれた環境のなかで自身の価値観やライフスタイルをつくり、自分を主張することに慣れた世代が、利用者や家族に増えてきているからかもしれません。
介護者は、そうした利用者や家族に寄り添うこと、そのためにも相手の価値観や気持ちを察して応じられる引き出しを持つことが求められます。その切り札となるのが「接遇」です。
接遇といえば、あいさつや身だしなみ、言葉づかいが挙げられますが、それらは最低限必要な基本で、最も重要なのは「相手にとってどうなのか?」「状況に合っているのか?」と、利用者の立場や状況に見合った対応です。利用者の価値観や気持ち、その場に合った対応は、利用者の「自分は理解されている」「今はこういう状況なのだ」という安心感を生み、介護者と信頼関係を築く土台になるからです。
そのためには、利用者一人ひとりを理解し、状況を察することが大切です。生活歴、家族、仕事、こだわり、好き嫌いなど、利用者のパーソナリティがわかると、日常の行動の意味、心情なども理解できるようになるでしょう。
では、利用者を理解し、状況を察するためにはどうしたらいいのでしょうか。
ヒントは利用者との会話に潜んでいます。利用者一人ひとりの話をとことん聞き、それぞれの心に寄り添えば、利用者や状況に応じた対応も可能です。
本誌では、利用者の話をとことん聞くためのポイントを紹介しています。
人財育成コンサルタント。株式会社グロウス・カンパニー+代表取締役。コンサルタントのほかにも、
研修講師、講演と多方面で活躍中。著書に『すぐに使える介護のための接遇講座』(中央法規出版)
がある。
イラスト/フジサワミカ