利用者が自分だけの本を作るデイ 自由に綴る“美穂の家文庫”を始めて【1】

2018年03月22日

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想いを文字にしても、絵を描いても、折り紙や写真を貼ってもいい。空白のページに好きなことを記して自分だけの本を作る。そんな“美穂の家文庫”がもたらした成果とは?静岡県にある小規模デイサービス、美穂の家・沓谷を訪ねました。


自分だけの本作りを楽しんでほしい。スタッフの想いから生まれた美穂の家文庫
静岡市の住宅街の一角に建つ「ボンベルカーユ・デイ 美穂の家・沓谷」。ここは市内で2つのデイサービスを運営している代表取締役社長の田島和子さんが実家を改造して開所した小規模デイです。


屋内に入ると、壁には色も柄もさまざまな手作りの本が吊り下げられていました。美穂の家文庫と称したこの本の持ち主は利用者一人ひとり。利用者が自分の本に好きなことを書いています。


美穂の家が、美穂の家文庫の取り組みを始めたのは2017年9月のこと。発案者であるスタッフの田邉十樹(たなべとおき)さんに、そのきっかけを伺いました。


「ヒントは『驚きの介護民俗学』(著/六車由実)という本です。これは介護職員として施設で働き始めた民俗学者の著者が多くの高齢者の方々から聞き取った話を中心にまとめたもの。その過程から、利用者様一人ひとりのライフストーリーがまとめられることがわかりました。それをヒントに、『利用者様の生い立ちから現在までを伺い、ご自身の記録となる一冊の本を作ってはどうだろう。それをお渡ししたら、喜んでいただけるのではないか』そう思ったことが美穂の家文庫につながりました」


20180322_02


まず本体の制作から始めました。「あるもので作ろう」と用意したのは段ボールや裏が白紙のチラシなど。まず段ボールを切って二つに折り、布を貼って表紙を作りました。布は田島社長が着物の端切れなどを提供したそうです。「本は利用者様にとって、唯一のものになるわけですから、布はご自身で選んでいただきました。みなさん、布選びを楽しんでくれました」と田邉さん。「どれにしよう」と悩みぬいた末に布を決めた人がいました。迷っている人に「あなたにはこの色のほうが似合う」とアドバイスする利用者もいたとか。「これも使ってほしい」と材料の布となる衣類を持ってきた女性もいました。


表紙の次はチラシを貼り合わせてページを作成。表紙とページを毛糸でとじて一冊の本に。くるみボタンと毛糸で、壁にかけたときに本が開かない工夫もしました。「本にはスタッフが聞き取った利用者様のライフストーリーを綴る予定でした。ところが過去の記憶があやふやな方もいて。そこでスタッフが聞き取る自分史ではなく、利用者様自身に好きなことを書いてもらうことにしたんです」(田邉さん)


何を書くかは利用者の自由です。日記のように今日の出来事を綴る人もいれば、好きな言葉や詩を書く人も。色鉛筆で絵を描く人もいます。写真などを貼る人もいました。そうやって自分好みの表紙がついた美穂の家文庫は、自分だけの特別な本になっていったのです。

株式会社KAZ企画 ボンベルカーユ・デイ 美穂の家・沓谷(くつのや)(静岡県静岡市)

文/佐藤ゆかり 写真/中村年孝
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レクリエ 2018 3・4月号38,39ページに掲載

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